酸性雨

酸性雨

雨は金属を溶かして、流れてゆく。

(NARUTO デイダラ×サソリ)

「旦那、こりゃひと雨来るぜ。うん。」
デイダラが空を見ながら言った。オレもやつと同じように空を見た。
確かに空は濃い灰色の雲で覆われている。
「あぁ。」
足止めされちまう。オレは派手に降りそうな雨に嫌気がさした。
しかしデイダラは妙に嬉しそうだった。
「なんでそんな嬉しそうなんだ。」
「オイラ雨が好きなんだよ。あんな小さい雨粒が一瞬だけ流れ星みたいに空から降ってくるんだぜ。芸術的じゃねぇか。うん。」
ふん。
ガキのくせして芸術を語るデイダラにちょっとムカついて、反論したくなった。
「オレは雨が嫌いだ。金属を溶かすからな。…特にこういうアスファルトに囲まれた街の雨はよく金属を溶かすんだ。」
オレの言葉を聞いてデイダラは不思議そうな顔をした。
「えっ…雨が金属を溶かすのかい？」
「何だよ、お前知らねぇのか。酸性雨っていう雨は金属を溶かすんだぜ。」
てっきりオレの答えにデイダラは「なるほどな」と納得した顔になると思っていた。
しかし、デイダラは真面目な顔になった。

「それじゃあ…旦那も溶けちまうのか？」

ふざけて言っているのかと思うような言葉だったが、真剣なデイダラの眼差しにオレは少しの間戸惑った。
デイダラが何処か悲しそうに見えたのは気のせいだろうか。
オレはできるだけ明るい返事をしようと思った。
「なぁに言ってやがる。オレはそんなにヤワじゃねぇよ。」
そんなんで溶けてたらオレの体はもたねぇよ。
「そっか…良かった。」
デイダラの顔は緩んだ。何かに安心したようだった。
一体何を心配してたんだか…。

「サソリの旦那」
そう言って突然デイダラはオレを強く抱きしめてきた。

「お、おいデイ…」
「オイラ旦那がいなくなったら、おかしくなっちゃうよ。だから、旦那が雨に溶けて消えてしまうのが怖かったんだ。」
「…バカかお前は。」
オレだってお前がいなくなったらおかしくなっちまう。
「お互い様だろ？」
デイダラは何も言わずに笑顔で返した。

地面に斑点が出現した。
雨がやってきたのだ。