煌く原子の光に飛び込もう
芸術論
デイダラの芸術論の中に潜む、サソリの芸術論。
(NARUTO カプなし)
デイダラの芸術論の中に潜む、サソリの芸術論。
(NARUTO カプなし)
大蛇丸が暁を抜けて、サソリはデイダラという新人とツーマンセルを組むことになった。その新人は粘土を使って様々な生き物 を造る能力を持っていたが、サソリは粘土なんぞガキの遊びに過ぎないと馬鹿にしていた。何よりもその造形を爆発させることが芸術だと豪語するのが、造形は 永久の美と考えるサソリには全く理解できなかった。しかし特にデイダラは足を引っ張ることもないので、彼は気にしないことにしていたのである。今回も何事 もなく任務が終わった後、アジトへ戻るために森の中を歩いていたのだ。
「サソリの旦那、ちょっと待っていてくれ。」
珍しくデイダラがサソリに話しかけた。彼らが組み始めて数ヶ月が経つが、ほとんど会話をしていなかったのである。話をするといえば任務の話をサソリがデイダラに切り出すぐらいだった。
「あ、ああ…」
不意に話しかけられ、やや曖昧な言葉をサソリは返した。
木に鳥が止まっている。サソリの承諾を得たデイダラはすぐに自分の荷物の中からスケッチブックと筆を取り出し、一心不乱に木に止まっている鳥を描き出した。その姿は真剣そのものでサソリにとって実に新鮮な光景だった。…と同時にある疑問が頭をよぎった。
…あいつは粘土を扱うんじゃねーのか?
サソリは幼い頃から傀儡師としてその生涯を捧げてきた。常に美しい傀儡の研究に没頭して、ついに発狂してしまいそうになった程である。サソリは傀儡を作る 際決して設計図を描かない。それは自分の感性を信じているからであり、二度と同じものを作らないためである。永久に残る芸術を追求しているのだから「二つ 目」は無いのだ。そんなサソリにとって、デイダラの絵を描く姿はどう考えても「設計図を描いている」としか思えなかったのだ。設計図に頼る造型など、芸術 ではない。サソリのデイダラに対する軽蔑は一層増した。
「おい、てめぇの芸術は粘土じゃなかったのか。」
ついにサソリは声を出した。それは、デイダラの芸術への姿勢に対しての怒りだった。
しかしデイダラは驚くこともなく相変わらず真面目な顔をしていた。
「殺しているんだよ。」
「…殺す?」
思わぬデイダラの発言にサソリは興味を抱いた。デイダラの抽象的なそれに「芸術」が潜んでいると感じたからだ。
「こうやって生きているものを紙の上で動きを止めてるんだから、殺すも同然だろ。そしてオイラがこの両手で生き返らせるんだ。」
「殺して生き返らせるのか。…傲慢な神だな。」
自分勝手なデイダラの考えをサソリは皮肉った。
「確かに傲慢かもしれない。…けどな旦那、生きているものってのはそれだけで儚くて美しいものなんだぜ。一瞬たりとも同じ姿なんて無い。だから、それをそのまま粘土になんかできねぇよ。オイラは生きているものを造り変えたくない。」
「…」
儚いものなんて美しくない。やっぱりこいつとは考え方が合わない。
サソリは少しでもデイダラの言葉に惹かれてしまった自分を嫌悪した。怪訝な顔で何も言わなくなったサソリを見てデイダラは困ってしまった。
デイダラはサソリが自分をよく思っていないことを知っていた。明らかに芸術という点においてサソリはいつもデイダラを非難していたからだ。
「旦那だって同じだろ。まぁ…旦那の場合は本当に殺しちまうけどな。うん。」
その場の空気を和らげるかのようにデイダラは冗談っぽく言葉を付け足した。しかし、その言葉はサソリの心をつき刺した。
サソリ自身も人傀儡を造ることにおいてデイダラと近似したことをしていたのである。
自分も傲慢な神であったのだ。
自分もまた、生きているものを美しいと感じていたのだろうか。
「…そうだな。」
急に弱くなったサソリの言葉にデイダラはただただ不思議そうな顔をするだけだった。
「サソリの旦那、ちょっと待っていてくれ。」
珍しくデイダラがサソリに話しかけた。彼らが組み始めて数ヶ月が経つが、ほとんど会話をしていなかったのである。話をするといえば任務の話をサソリがデイダラに切り出すぐらいだった。
「あ、ああ…」
不意に話しかけられ、やや曖昧な言葉をサソリは返した。
木に鳥が止まっている。サソリの承諾を得たデイダラはすぐに自分の荷物の中からスケッチブックと筆を取り出し、一心不乱に木に止まっている鳥を描き出した。その姿は真剣そのものでサソリにとって実に新鮮な光景だった。…と同時にある疑問が頭をよぎった。
…あいつは粘土を扱うんじゃねーのか?
サソリは幼い頃から傀儡師としてその生涯を捧げてきた。常に美しい傀儡の研究に没頭して、ついに発狂してしまいそうになった程である。サソリは傀儡を作る 際決して設計図を描かない。それは自分の感性を信じているからであり、二度と同じものを作らないためである。永久に残る芸術を追求しているのだから「二つ 目」は無いのだ。そんなサソリにとって、デイダラの絵を描く姿はどう考えても「設計図を描いている」としか思えなかったのだ。設計図に頼る造型など、芸術 ではない。サソリのデイダラに対する軽蔑は一層増した。
「おい、てめぇの芸術は粘土じゃなかったのか。」
ついにサソリは声を出した。それは、デイダラの芸術への姿勢に対しての怒りだった。
しかしデイダラは驚くこともなく相変わらず真面目な顔をしていた。
「殺しているんだよ。」
「…殺す?」
思わぬデイダラの発言にサソリは興味を抱いた。デイダラの抽象的なそれに「芸術」が潜んでいると感じたからだ。
「こうやって生きているものを紙の上で動きを止めてるんだから、殺すも同然だろ。そしてオイラがこの両手で生き返らせるんだ。」
「殺して生き返らせるのか。…傲慢な神だな。」
自分勝手なデイダラの考えをサソリは皮肉った。
「確かに傲慢かもしれない。…けどな旦那、生きているものってのはそれだけで儚くて美しいものなんだぜ。一瞬たりとも同じ姿なんて無い。だから、それをそのまま粘土になんかできねぇよ。オイラは生きているものを造り変えたくない。」
「…」
儚いものなんて美しくない。やっぱりこいつとは考え方が合わない。
サソリは少しでもデイダラの言葉に惹かれてしまった自分を嫌悪した。怪訝な顔で何も言わなくなったサソリを見てデイダラは困ってしまった。
デイダラはサソリが自分をよく思っていないことを知っていた。明らかに芸術という点においてサソリはいつもデイダラを非難していたからだ。
「旦那だって同じだろ。まぁ…旦那の場合は本当に殺しちまうけどな。うん。」
その場の空気を和らげるかのようにデイダラは冗談っぽく言葉を付け足した。しかし、その言葉はサソリの心をつき刺した。
サソリ自身も人傀儡を造ることにおいてデイダラと近似したことをしていたのである。
自分も傲慢な神であったのだ。
自分もまた、生きているものを美しいと感じていたのだろうか。
「…そうだな。」
急に弱くなったサソリの言葉にデイダラはただただ不思議そうな顔をするだけだった。
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