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煌く原子の光に飛び込もう
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終点

死ねないオレに終わりはあるのか。

敵は確実に殺せた、と思ったことだろう。攻撃は確かに角都の心臓を貫いていた。
それでも角都はわずかに顔を歪ませているだけだ。
「お前…何故死なない。」
「残念だったな、オレは心臓を5つ持っている。」
「それならば、あと4つ潰せば死ぬのだな。」

「ああ、死ぬ。」

オレは角都から発せられた言葉に、耳を塞ぎたくなった。
それはいつもは必死に忘れようとしてきた真実だ。

角都の不死身を支えているのは5つの心臓。
5つだけ。
その5つが全部潰されてしまったら角都は死ぬ。


それじゃあオレは?


オレは自分の心臓を突き刺した。
強く。強く。ぐっと奥まで届くように。
心臓が原型をとどめない位、ぐちゃぐちゃになるように。
失神しそうな激痛がオレを襲った。

…しかしそれで倒れたのはオレではなく、オレと戦っていた相手だった。
相手はもがき苦しむような顔をして死んでいった。
オレはどうしようもなく悲しくなった。
オレは結局、死ねないのだ。
心臓がたった1つだとしても、たとえ潰されようとも、死ぬことなんてない。

死んでしまう体を持つ角都と死ねない体を持つオレ。
角都とはいつか死別する時がくる。
その時はずっと先のことかもしれない。でも、それは確実にやってくる。
紛れもない真実だ。
オレはその真実の重さに耐え切れなくなって、相手が死してなお自分の体を刺し続けた。
いつしかオレはその痛みに倒れ込んでいた。意識はしっかりしているが、体が痛くて動かない。


「飛段」
戦闘を終えた角都が自分の方へ寄ってきた。そして傍に座った。
「角都…心臓は?」
「敵から奪った。それよりお前こそ、なんて傷の量だ。」
「あぁ…」
自分でもわかる。オレの体はズタズタだった。
そんなオレを見て角都がそっと手を近づける。広がりすぎた傷口を縫合しようとしてくれているのだ。
オレはその手首を握って阻止した。角都は不思議そうな顔をした。

「早くオレを殺してくれ。」
「何を突然。」
「残されるのは嫌だ。」

お前が死んだ後も生き続けるなんてつらいんだ。
お願いだから。
オレを独りにしないでくれよ。

「オレが死ぬときに殺してやる。」

角都は手首を掴んでいたオレの手を優しく外し、傷を縫い始めた。
オレは黙ってただ角都の横顔を見た。

死ねないオレに終わりは来るのか。
角都はずっとオレと生きてくれるのか。

答えはもう出ている。
なのにオレは激痛によって鈍る思考の中、何度も問いかけていた。
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