お金の使い方

お金の使い方

お前のためなら惜しみなく金を使えるのだ。

(NARUTO 角都×飛段)

「困りますねェ…」
宿の受付係は嫌そうな顔をわざとした。それでも男は顔色一つ変えずに通常料金を差し出した。
「うちは休日のチェックインは割増になっているんですよ。」
「そんなことは知らん。オレは表の看板にあった料金しか払う気は毛頭ない。」
全くケチな客だ。たかが20両の割増を何故そこまで嫌がるのか。受付係は相変わらず嫌味に満ちた顔をした。

沈黙の対峙を続ける男の傍らで、無機質な金属と対峙する男が一人。
ガチガチと金属同士を無理に付けようと必死に手先を動かしている。その顔は苛立ちと不安が混じっていて、今にも泣きそうな顔である。
「くっついてくれよ…ジャシン様ァ…」
彼の言うジャシン様は真っ二つだ。物理的に見て、彼のジャシン様が元通りになるのは不可能である。もうすぐ彼の紅い瞳から涙が落ちそうだ。

「これで直してもらってこい。宝石屋でも行けば何とかなるだろ。」

札束が男の手に渡された。渡された男は銀髪を掻きむしりながら照れ臭そうに笑った。
「角都…」
「早く行ってこい。」
「ああ！」
壊れた首飾りと札束を握りしめて、その男は宿を飛び出した。
それを見て覆面の男が口布の奥で微笑んだのを、受付係は見逃さなかった。

けっ…こいつはあの銀髪にだけ金を惜し気もなく使うんだな。

「料金、頂戴いたします」

受付係は渋々通常料金を受け取った。