煌く原子の光に飛び込もう
Twilight On Mars
この火星の黄昏の中で
一つになろう
この火星の黄昏の中で
一つになろう
どうしたものだろう
お前に会うたびに
お前に溺れていく
敵同士なのに、お前と2人きりになるとその事実を忘れてしまう。
まるでどこか別の場所にいるように。
誰も寄り付かないような路地裏で待ち合わせをして、ユースタス屋の仲間に悟られないように船内に忍び込んだ。船長がお忍びで自分の船に入るのも何ともおかしな話だが。やつは「危ない橋渡りだ」と笑った。
やつの部屋は船の西に面していて、ちょうど西日が部屋一面を赤く染めている。
派手な格好に似合わず、その部屋はなんとも無機質な造りだった。おそらく死角を作らない為だろう。
――ここは火星だ。
今この火星にはおれとお前だけがいる。
どんな周囲の音だって聞こえやしない。
おれの前に在るのは――お前だけだ。
深い口付けから放たれると、ユースタス屋の口がおれの耳元に近づいてきた。
甘噛みされて、舌で舐められ、最後に口づけをされる。
やつの逞しい体に一層強く抱きつく。やつの首筋に口を付ける。匂いを嗅ぐ。ユースタス屋の匂いがする。もう頭がおかしくなりそうだ。匂いだけでイっちまいそうだ。
だってここは火星だから。
そのゆったりとした動作がどうしようもなく長い時間に感じられて、恥ずかしくなっておれはやつに抱きついたままやつの首筋に顔を付けていた。
扱いている向こうからしてみれば大層窮屈だろう。
「だって…顔を見られたくないっ…」
「てめェは処女か」
その衝撃でおれはやつから手を離した。
「お前のやらしい顔見せろよ」
「いいぜっ…このまま出せ」
「あぁっ」
お前が穢れちまうっ…
「…だって…ほんとのことだろっ…」
「じゃあお前は汚いと思いながらおれの飲んでいるのか?」
「・・・お前のは別」
「なんだそりゃ」
部屋はもう暗くなっている。黄昏時だ。
火星にも黄昏なんてあるんだろうか。
そんな下らない疑問が頭に浮かんだが、すぐにやつの口付けとともに消え去った。
「なんだ」
「お前が好きだ」
「おれも」
だって、ここは火星なんだから。
最後まで読んで下さってありがとうございます。
題名は私の好きな曲からとりました♪
時間的に「朝方のシンデレラ」の前の話です。
エロいの書くのって難しい(´ω`)
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