恐怖に怯える度に
気づかされる
その美しさを
キドロというよりローキドかもしれません。
少しばかりグロいかもです。。
◆
初めてトラファルガーに会った時からやつの持つ能力が恐ろしかった。
戦闘は命をお互いに賭けて戦うものだ。今この時に死のうとも相手を恨まない。おれは今までそう思って、そうやって戦ってきた。だから「人を殺す」という行為は戦いの勲章だと思っていた。海賊ってのは、そういう勲章を増やしていくものだろう。だがやつの能力はなんだ。敵の体をただの肉の塊にしてなお生かし続ける。あいつは海賊でもなんでもねェ。ただのイカれた野郎だ。
そんなやつと偶然再会したのは、追ってきた海軍を一掃した直後だった。海兵の死体の中を颯爽と歩いてくる。相変わらず勝気な笑みを口だけに浮かべてやがる。おれはその顔を見て無性にムカついたので、やつが怒りそうな言葉を探した。
「そこらへんに散らばっている死体をバラして遊んだらどうだ変態」
お前の能力なんて遊ぶための価値だけしかねェ。
そう付け加えようとしたが、やつの言葉の方が早かった。
「生きているものじゃなきゃ意味がない」
「けっ、とんだ傲慢な神だぜ」
ますますトラファルガーの印象が悪くなった。
どこまでも戦闘を馬鹿にしてやがる。
命ってものを馬鹿にしてやがる。
「体のパーツは生きているからこそ美しいんだ」
「何言ってんだてめェは」
「おれは――」
やつの冷たい手がおれの首筋に触れる。殺気を感じなかったので避けなかった。
…いや、避けられなかったんだ。
やつの目が妖しく光っている。
「あんたこそバラバラにしたいんだけど」
手が首筋から胸板まで下りてくる。ゾクリ、と何かが背筋を通る。
それははたして恐怖からくる悪寒なのか。
それとも。
「あんた綺麗だから」
官能的な歓喜なのか。
そう思った途端にトラファルガーの妖艶な顔に惹かれていく自分がいた。
恐ろしくて堪らなかった。
「そんな言葉、そこらへんの女にでもほざいてろ」
恐怖を拭うために、そう喧嘩腰に言い放った。
だが、トラファルガーは笑っている。
この状況を逃れるために、本能的にその場を立ち去ろうと体が背を向けた。
「あんただっておれにバラバラにされたいんだろ?」
やつの言葉に振り返りそうになったができなかった。
どんなにそれを否定する言葉を探しても、泡のように頭から消えていった。
否定する心とは裏腹に、ある情景が水のように頭からあふれ出してくる。
それは初めてトラファルガーに会った時の情景だった。
やつの手が生きた肉の塊を手に持つ姿。
あぁ、それは怖いんじゃない。
美しいんだ。
おれはトラファルガーの腕の中で肉の塊になりゆく自分を想像した。
ゾクリ、と何かが背筋を通る。
それははたして恐怖からくる悪寒なのか。
それとも――
Fin
◆
最後まで読んで下さってありがとうございました。
こういった危ない関係なローとキッドも好きです。