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煌く原子の光に飛び込もう
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The Sun in to water
Feat.べにさま

みずのなかに
たいようが、いる



好奇心に輝くその瞳の主は、部屋に充満するニトロベンゼンの香りを杏仁豆腐だという。そんなもんねェぞとドフラミンゴ博士は笑った。立ち並ぶ特級のアルコールや芳香族化合物の瓶。机の上に無造作に置かれたジャーナルの山。降り積もる文字たちの上に、ロー少年の興味を引くものがあった。

「あれ、なんだ」
「どれ・・・」
「あのたまがたくさんくっついているやつ」
「ああ、分子模型か」
「ぶんし・・・?」
「ぶんしもけい。これでなんだって作れるんだぜ」

ドフラミンゴは作りかけのキレート錯体を壊した。無機化学に戯れるのは博士の気まぐれだ。模型は色とりどりの球とボーンに分かれていく。その細やかなパーツが子供の興味を引かないはずがなく。
ローは差し出された”おもちゃ”に夢中になった。

「ほら、きょうりゅう」
「フフフ・・・ドレーク博士にみせてやらねェと」

子供らしい分子模型の使い方にドフラミンゴはほほ笑む。

「これは何だと思う?」
「えっ?」

大きな手の中にあるものをローは覗き込んだ。そこには水色の球の間に赤い球が繋がれている不思議な形の模型があった。

「とり?」
「フフフ・・・ちげェなァ・・・」

小さな柔らかい手が模型に触れる。

「やっぱりとりにしかみえないぞっ」
「そうか?」
「これはなんなんだ!?どふらみんごはかせ!おしえてくれよ!」
「フフフッ!」

ムキになる姿がさぞおかしいと言わんばかりにドフラミンゴは笑いながら、実験台に付いている蛇口を捻った。

「これだ」
「みず・・・?」

ジャージャーと音を立てながら流れる水。ローはその水と模型を交互に見比べた。

「ほんとうに?」
「ああそうだ。この水色のが水素で、赤いのが酸素」
「さんそならしってるぞ!くうきだろ」
「水素は知らねェのか」
「スイソ・・・」

スイソって何だろう。まるで意味のないうわごとのように呟く。ドフラミンゴは散らばるパーツから、一粒の水素を取り出した。

「水素はな、太陽なんだ」

少しばかり文学的な表現で説明してやると、幼い瞳はより一層大きく見開かれた。

「じゃあ、みずのなかにはたいようがいるんだな!」
「・・・ホントお前は面白いな」

ドフラミンゴはローの小さい頭を撫でた。この頭の中で、水と宇宙がさも面白く繋がっているのだろう。博士自身も脳内で想像してみることにした。目の前に宇宙が広がったが、それは既成の概念の中の宇宙だった。純真無垢な子供の頭の中を推し量ることは、どんな天才科学者も到底叶わないのである。

この少年の自由な発想をずっと永遠に残しておきたいのだ。永遠に。

ドフラミンゴ博士の願いはロー少年の笑い声の中に消えた。

Fin



一端の文字書きとして、言葉よりも芸術で”不穏な空気”に清風を吹かせたいと願う。 
(べにさんの素敵なクローンパロの設定をお借りしました)
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