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煌く原子の光に飛び込もう
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おもみ

幾多の困難を乗り越えて、己の首は重みを増してゆく。
首の軽さに、また涙が零れた。

*流血シーンがあるので気をつけてください



その鉄の臭いが周りに無造作にそびえ立っている金屑からくるのか、はたまた目の前の男の血からくるのか、もはや解らない。それくらい金屑は散らばっているし、その男は血だらけなのだ。青あざを額につくり、そこから血を流している。額の赤も、逞しい白い胸を染め上げる赤も、全部おれのため。ユースタス屋は倒れこむおれの隣に座り込み、己の血を代償にして守ったものを差し出す。おれはそれを強く握った。もう二度と手にすることは無いと思っていたおれの”愛”棒だった。ぜいぜいと息を吐き出すおれを見つめるユースタス屋の顔は、強敵に完敗した一端の海賊を嘲笑うものとはかけ離れていた。バカ見てェにクソ真面目な顔だった。クソ真面目で、泣けてきた。

「なに泣いてんだ馬鹿野郎」
「・・・完敗だ」
「ハッ、ンなもんいくらでもしてきたぜおれは」
「うるせェ」
「生きてんだからよ、いくらでもやり直せるだろーが」

もう離すんじゃねーぞ、ソレ。そう言ってユースタス屋は笑った。その清々しい笑顔の裏には幾多の血生臭い戦いが潜んでいる。仲間の死。敗北。孤独。痛み。嘆き。苦しみ。もがき。その全てが、この男の首に掛かる。おれにはない”1億分”の重みがユースタス屋にはあるのだ。

おれはライバルにそんな優しい顔できねェ

自分の首の軽さに、また涙が零れた。

Fin



認めざるを得ない、3億首の貫禄。
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