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煌く原子の光に飛び込もう
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A Thousand Nights

幾千の夜を超えて
おれはお前を待っていた




恐竜に姿を変えるとき、ふとおれはもとから恐竜だったのではないかと思う。身体の中に広がる細胞の宇宙はその一つ一つが途方もない歴史を持ち、幾多の世紀を越えて今己の肉体を形成している。もしかしたら、太古の昔に恐竜を構築していた全ての細胞が今、人間のおれを構築しているのではないか。悪魔の実を口にする前から、きっとおれは恐竜だったのだ。


甘い息を吐くトラファルガーの鍛え抜かれた褐色の首筋に接吻をし、喉仏をなぞる。首の皮膚から浮き出ているそれを見るたびに、目の前にいるのは紛れもなく同性だということを実感してしまう。そして自分と同じように首に賞金を懸けられた敵だということも。

「ドレーク屋っ・・・くすぐってェからやめろっ」

まゆを歪ませて笑いながら、おれの胸板を叩く。その握りこぶしにはちっとも力が入っていない。それは、本気で嫌ではないからだ。盛んに動く手首をそっと捉え、視線は蒼い瞳に向けたまま、DEATHの文字に口を付ける。たちまち隈の下が赤くなっていく。その姿は生娘さながらで、おれの心を酷くざわつかせた。

ざわつく心は目の前の男が、同性だということも敵だということも忘れさせる。
心臓から全身へ送り込まれる血が沸騰しているのがわかる。うずく何かに名前を付けることができない。おれの身体の中の宇宙はただあることを謳っているのだ。

"性別や置かれた環境をも越えて、この男が愛おしい"

血がうずいて仕方がない。
れがおれを呼び覚ましている。

「おい!恐竜になっちまってンぞ」
「なんだって?」
「ほら、ココ・・・」

するりと拘束を解かれた手が頬に触れた。伝わる振動がざらついているのがわかった瞬間、全細胞がもとのあるべき姿に変化していく感覚がした。トラファルガーに触れるたびに、おれは恐竜への変化を抑えられない。

「おれはもともと恐竜だったのかもしれない」
「”お前と会うと昔の血が疼く”ってか?」
「ああ、そうだ。」

――幾千の時を越えて、おれはお前を待っていたんだ。

そう囁くと、くっせェこと言うなバカ、と目の前の数億年越しの待ち人は頬を赤らめて毒づくのだった。

Fin



9.04に感謝と敬愛をこめて。
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