煌く原子の光に飛び込もう
HEART
心臓はとくとくと止まることなく鼓動を刻む。
それは、その人の生きてきた証であり、生きているという証である。
Inspired by my lovely person and anonymous poem<3
Thanks for 祈り言さま and the arcient.
★祈り言さまへ捧げます。
心臓はとくとくと止まることなく鼓動を刻む。
それは、その人の生きてきた証であり、生きているという証である。
Inspired by my lovely person and anonymous poem<3
Thanks for 祈り言さま and the arcient.
★祈り言さまへ捧げます。
◆
おれのハートにキスしてくれよとローは笑った。
上着を纏わぬ華奢で逞しい胸。その左胸を右手でなぞる。静かだが確かなビートが手を伝って頭に響く。その響きはこの男が生きてきたという証である。幾多の苦しみと悲しみを乗り越えてなお、心臓は動いている。軌跡の塊とも言うべきそれの上に口付けを落とす。
この男に出会えた奇跡をかみ締めながら、ありもしない神に感謝をして。
ふとキッドは初めて男の身体に口付けをしたことに気づいた。無類の女好きのこのおれが男に惚れ込んじまうなんて甚だ可笑しい。可笑しいが紛れもない事実。この妖艶な男に心底惚れてしまっているのである。
「なァユースタス屋」
「なんだ」
妖妖たる佳人の花
蒼蒼たる佳人の瞳
ローのは今にも消えそうなくらい儚い顔をしている。その顔は今まで見てきたどんな娼婦よりも儚く美しい顔だった。海賊だからそんな顔ができるのだとキッドは思った。海賊の命はそこらの娼婦よりも軽い。だからこそ、出会えたことが奇跡なのである。
「おれの太股にも”ハート”があるんだ」
――キスしてくれよ
そう言ってキッドの後頭部を乱暴に抱き口付ける。最初は浅い口付けであったが、ローの舌は深く深く貪る様にキッドの口の中を泳いだ。まるで海に堕ちて行く感覚だった。キッドは今にも溺れそうな気がした。むしろ、このまま溺れてしまいたかった。深い口付けから放たれるとそのままローの唇はキッドの首筋に付き、舌を出して頚動脈をなぞった。そして耳に吐息を吹きかけ、早くとキッドの欲情を煽り立てるのであった。
男慣れしているのかと疑うほど、ローは余裕の笑みを浮かべている。その余裕を穢したい衝動にキッドは駆られた。勢いよくローの身体を押し倒し、蒼い髪から頬を伝って顎を掴み口付け、荒くジーパンを脱がせる。もう一つの心臓は、左太股の付け根にあった。たった五文字のHEART。それはたいそう密やかにこの男の身体に刻まれている。キッドはこの心臓に触れたかも知れぬ無数の架空の男たちに嫉妬をした。
「一体何人の野郎どもがここに触れたんだ?」
そう言ってローの第二の心臓に触れる。指先で心臓を冒しつつ、目線はローの瞳に向けたまま。揺らめく蒼をキッドは見逃さなかった。先ほどの余裕ぶった顔が崩れ、悩ましげな潤んだ眼差しを向けている。ほんの少し、肩も揺れている気がする。妙な違和感がキッドの頭をよぎった。その姿は男慣れしているとは到底思えないものであったのだ。
「お前だからっ・・・」
次に連なる言葉を遮るのは、紅潮する顔。それは初めて彫師以外の人間に太股に潜む心臓を見られた羞恥心からか、初めて経験する自分に対して男が持つ欲情した瞳への恐怖心からか。きっと前者だろうとローは思った。
左胸の心臓は誰だってその在り処を知っている。ローにはそれが気に食わなかった。”ハート”ってのは、誰にも知られたくないものを刻んでいるもんだ。ローが刻んだものは、海賊としての誇りや船長としての覚悟ではない。
「お前だから見せたんだ」
それは目の前の男の心臓だった。
死と隣り合わせの日常の中で、永久という言葉は意味をなさない。もしかしたら明日キッドは死ぬかもしれない。死ぬことはなくとも、この先の海でもう二度と会うことはないかもしれない。だからこそ、自分の中に密かに刻んでおきたかった。
お前がずっとおれの中でビートを鳴らしてくれるように。
そしたら死んだっておれたち一緒にいられるだろ?
「それに・・・お前以外の野郎になんて興味ねェよ」
「てめェも初めてなのかよ」
こくり、と頷く姿はまるで生娘のようだとキッドは笑った。その笑いにつられてローも微笑む。相変わらずその顔は儚い。
軽い命だろうが関係ねェ。おれは、この笑顔を守るだけだ。
願いに似た想いを抱きながら、第二の心臓に口付けをする。キッドの息吹で、HEARTの五文字が生を授かったとローは思った。そして、また儚い笑いを繰り返すのだ。
顔に咲く花。花は時が経てば枯れてしまう。
だからこそ人はそれを美しいと感じるのだろうが、のうのうと見て枯らすなんて馬鹿らしい。
枯れてしまうのなら、その前に摘んでしまえばいいのだ。
Fin
◆
祈り言さまから頂いた素敵設定で書いてみました。私の文で素敵設定が台無しに・・・!ホント稚拙な文で申し訳ございませんっ(/Д\)もしよかったら受け取ってやって下さいませ(;Д;)
リクエストどうもありがとうございました。そして、末永くよろしくお願いいたします゚+.゚(-ω-人)
顔に咲く花というのは笑顔のことです。咲くという漢字はもともと”笑う”という意味だったそうなので、花と関連させて書きました。そして最後の三行は漢詩からインスピレーションを貰いました。羅敷という美しい娘が道端で花を摘んでいるという詩がありまして・・・それを参考に書きました。
おれのハートにキスしてくれよとローは笑った。
上着を纏わぬ華奢で逞しい胸。その左胸を右手でなぞる。静かだが確かなビートが手を伝って頭に響く。その響きはこの男が生きてきたという証である。幾多の苦しみと悲しみを乗り越えてなお、心臓は動いている。軌跡の塊とも言うべきそれの上に口付けを落とす。
この男に出会えた奇跡をかみ締めながら、ありもしない神に感謝をして。
ふとキッドは初めて男の身体に口付けをしたことに気づいた。無類の女好きのこのおれが男に惚れ込んじまうなんて甚だ可笑しい。可笑しいが紛れもない事実。この妖艶な男に心底惚れてしまっているのである。
「なァユースタス屋」
「なんだ」
妖妖たる佳人の花
蒼蒼たる佳人の瞳
ローのは今にも消えそうなくらい儚い顔をしている。その顔は今まで見てきたどんな娼婦よりも儚く美しい顔だった。海賊だからそんな顔ができるのだとキッドは思った。海賊の命はそこらの娼婦よりも軽い。だからこそ、出会えたことが奇跡なのである。
「おれの太股にも”ハート”があるんだ」
――キスしてくれよ
そう言ってキッドの後頭部を乱暴に抱き口付ける。最初は浅い口付けであったが、ローの舌は深く深く貪る様にキッドの口の中を泳いだ。まるで海に堕ちて行く感覚だった。キッドは今にも溺れそうな気がした。むしろ、このまま溺れてしまいたかった。深い口付けから放たれるとそのままローの唇はキッドの首筋に付き、舌を出して頚動脈をなぞった。そして耳に吐息を吹きかけ、早くとキッドの欲情を煽り立てるのであった。
男慣れしているのかと疑うほど、ローは余裕の笑みを浮かべている。その余裕を穢したい衝動にキッドは駆られた。勢いよくローの身体を押し倒し、蒼い髪から頬を伝って顎を掴み口付け、荒くジーパンを脱がせる。もう一つの心臓は、左太股の付け根にあった。たった五文字のHEART。それはたいそう密やかにこの男の身体に刻まれている。キッドはこの心臓に触れたかも知れぬ無数の架空の男たちに嫉妬をした。
「一体何人の野郎どもがここに触れたんだ?」
そう言ってローの第二の心臓に触れる。指先で心臓を冒しつつ、目線はローの瞳に向けたまま。揺らめく蒼をキッドは見逃さなかった。先ほどの余裕ぶった顔が崩れ、悩ましげな潤んだ眼差しを向けている。ほんの少し、肩も揺れている気がする。妙な違和感がキッドの頭をよぎった。その姿は男慣れしているとは到底思えないものであったのだ。
「お前だからっ・・・」
次に連なる言葉を遮るのは、紅潮する顔。それは初めて彫師以外の人間に太股に潜む心臓を見られた羞恥心からか、初めて経験する自分に対して男が持つ欲情した瞳への恐怖心からか。きっと前者だろうとローは思った。
左胸の心臓は誰だってその在り処を知っている。ローにはそれが気に食わなかった。”ハート”ってのは、誰にも知られたくないものを刻んでいるもんだ。ローが刻んだものは、海賊としての誇りや船長としての覚悟ではない。
「お前だから見せたんだ」
それは目の前の男の心臓だった。
死と隣り合わせの日常の中で、永久という言葉は意味をなさない。もしかしたら明日キッドは死ぬかもしれない。死ぬことはなくとも、この先の海でもう二度と会うことはないかもしれない。だからこそ、自分の中に密かに刻んでおきたかった。
お前がずっとおれの中でビートを鳴らしてくれるように。
そしたら死んだっておれたち一緒にいられるだろ?
「それに・・・お前以外の野郎になんて興味ねェよ」
「てめェも初めてなのかよ」
こくり、と頷く姿はまるで生娘のようだとキッドは笑った。その笑いにつられてローも微笑む。相変わらずその顔は儚い。
軽い命だろうが関係ねェ。おれは、この笑顔を守るだけだ。
願いに似た想いを抱きながら、第二の心臓に口付けをする。キッドの息吹で、HEARTの五文字が生を授かったとローは思った。そして、また儚い笑いを繰り返すのだ。
顔に咲く花。花は時が経てば枯れてしまう。
だからこそ人はそれを美しいと感じるのだろうが、のうのうと見て枯らすなんて馬鹿らしい。
枯れてしまうのなら、その前に摘んでしまえばいいのだ。
Fin
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祈り言さまから頂いた素敵設定で書いてみました。私の文で素敵設定が台無しに・・・!ホント稚拙な文で申し訳ございませんっ(/Д\)もしよかったら受け取ってやって下さいませ(;Д;)
リクエストどうもありがとうございました。そして、末永くよろしくお願いいたします゚+.゚(-ω-人)
顔に咲く花というのは笑顔のことです。咲くという漢字はもともと”笑う”という意味だったそうなので、花と関連させて書きました。そして最後の三行は漢詩からインスピレーションを貰いました。羅敷という美しい娘が道端で花を摘んでいるという詩がありまして・・・それを参考に書きました。
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