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煌く原子の光に飛び込もう
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偏食王子

恋する人間には偏食王子もお手上げ。

★ららさまへ捧げます。



物質に当たる放射線は、吸収されるか反射されるかのどちらかである。色のある物質ほど我儘な偏食王子だ。数え切れぬほどの可視光線から、好きな色だけを食べて嫌いな色には見向きもしない。偏食王子のお零れが人間の目に届く。偏食王子が全ての色を食べてしまったとき、その物質は闇に包まれる。

青いライトに照らされた店内。そこはキッド行きつけの店であった。青色LEDから発せられる450nmの波がキッドの髪を黒く染め上げる。やかましいほどの特徴である赤髪を隠すことができて、下手に海軍に見つかりたくない身としては好都合だ。ライムが踊るコロナを飲んでいると、ライムのように千鳥足でこちらにくる男が1人。

「ほどほどにしろよ、トラファルガー」

酒でここまで人が変わるのかと思うほど、目の前にはだらしない笑みを浮かべたローが立っている。いつもの傲慢極まりない鋭い笑みは一体何処へ行ってしまったのか。死の外科医には到底見えぬ顔をしている。

「ユースタスやぁ」

顔もだらしがなければ、言葉もだらしがない。こっちまで拍子抜けしてしまう。

「相変わらずお前の髪は真っ赤だなぁ」
「お前酔いすぎだぞ」
「酔ってねェよ」

そういってローはキッドの髪に触れる。くしゃりくしゃりとまるで子供を撫でる親のように。だらしない顔と親の手。何もかもが鬱陶しいはずなのだが、不思議と鬱陶しくはない。むしろ心地良かった。酒を飲んだときに垣間見えるローの穏やかな姿がクルーを惹き付けて止まないのだろうとキッドは思った。まだ出会って数日だが、世間を騒がせるような悪名の裏に潜むこの男の温かさを感じつつあった。

「おれの髪が赤く見える訳ないだろ」
「いいや、真っ赤だ」

断言する酔っ払いに反論する気はもう湧かなかった。ローがそう思うなら、そうなのだろう。幾多の目には見えない赤が、この男だけには見えてしまう。不思議と嫌な気はしない。

新しいコロナを頼む。バーテンは手際よく切ったライムをキンキンに冷えたコロナと共に差し出した。ライムを瓶の中に入れると瞬く間に泡に塗れた。不思議な感情ばかりが泡のようにあふれ出す。

だらしない顔も馴れ馴れしいその手も
不思議と嫌じゃない
黒いはずの髪を赤だと言い張るその言葉も
不思議と嫌じゃない

不思議と嬉しさが込み上げるのはなぜだかわからない

煮えきれない思いを押し殺すかのように酸味の利いたコロナを飲み干した。キッドがその不思議な感情の名前を知ることになるのはまだ先のことである。

「お前の髪の毛は真っ赤なんだよ」

お前はおれの太陽なのだとローは隣のキッドすら気づかないほど小さな声で呟いた。にんまりと笑うローの三日月の奥にある網膜は確かに赤を感じている。彼にはもうキッドの髪は赤にしか見えない。

偏食王子も恋する人間には敵わないというわけだ。

Fin


なんという物 理 ネ タ ^q^
タイトルをご覧になって「ローたんが偏食なのかしら★」と思われた方がいらっしゃったら本当にすいません(´Д`)スリーエイト記念にららさまからリクエストを頂いて書かせて頂きました(´∀`人)
ここここんなんでよかったら貰ってやって下さいませ(;Д;)返品は年中無休で受け付けております!
リクエストどうもありがとうございました!
ららさまに捧げます。
「キッド×ローで馴れ初め的なお話」
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