煌く原子の光に飛び込もう
酸化
金属の表面を酸素が侵食してゆく
時が美しい光沢を奪ってゆく
光沢を失った先にあるものは
決して磁力に引きつけられることのない酸化物
★センチメンタルキッド
金属の表面を酸素が侵食してゆく
時が美しい光沢を奪ってゆく
光沢を失った先にあるものは
決して磁力に引きつけられることのない酸化物
★センチメンタルキッド
◆
ふと甲板に出ると、無造作に置いてあるバケツが目に入った。確か船の掃除用にキラーが昔買っていたやつだ。
ブリキでできているのか、それは金属特有の光沢を失って赤く変色していた。海上の潮風に長く当たっていたせいだろう。
バケツに手を翳す。
能力を発動しても、バケツはただただ静寂を保っている。
「効く訳ねェよな」
おれの能力は磁力を発し、周囲の金属を引き付けられる。
だが酸化物はそうはいかねェ。おれの磁力に当たってもびくともしない。
仕方なくバケツを手にとる。ほとんどが風化してしまっている。
美しい光沢を失ってしまった鉄。
時が経つほどに失われゆくもの。
トラファルガーはおれにとっての”鉄”だ。
『ユースタス屋…お前が好きで溜まらない』
あいつはそう言っておれの耳元で好きだと囁いた。
それに答えるようにやつに口づけを落とした。
お前は金属のようにおれに引きつけられる。
でもそれは今だけじゃないのか?
お前の気持ちはいつまで酸化しないんだ?
どうしようもないもどかしさが心を蝕む。
この世に永遠などないとわかっていても、おれはやつの気持ちが永遠であって欲しいと願ってしまう。
おれはバケツを強く擦った。
擦って擦って
おまえの気持ちが酸化しないように。
擦って擦って
おれに引きつくように。
バケツを蝕んでいた錆がぱらぱらと落ちてゆく。
そっとバケツを引き付ける。
露出した光沢がおれを嘲笑うかのように美しく輝いていた。
Fin
◆
シリアスキッドさんでした。
キッドさんの能力を見てまっさきに思いついたネタです。
ローは”金”だから大丈夫。
ふと甲板に出ると、無造作に置いてあるバケツが目に入った。確か船の掃除用にキラーが昔買っていたやつだ。
ブリキでできているのか、それは金属特有の光沢を失って赤く変色していた。海上の潮風に長く当たっていたせいだろう。
バケツに手を翳す。
能力を発動しても、バケツはただただ静寂を保っている。
「効く訳ねェよな」
おれの能力は磁力を発し、周囲の金属を引き付けられる。
だが酸化物はそうはいかねェ。おれの磁力に当たってもびくともしない。
仕方なくバケツを手にとる。ほとんどが風化してしまっている。
美しい光沢を失ってしまった鉄。
時が経つほどに失われゆくもの。
トラファルガーはおれにとっての”鉄”だ。
『ユースタス屋…お前が好きで溜まらない』
あいつはそう言っておれの耳元で好きだと囁いた。
それに答えるようにやつに口づけを落とした。
お前は金属のようにおれに引きつけられる。
でもそれは今だけじゃないのか?
お前の気持ちはいつまで酸化しないんだ?
どうしようもないもどかしさが心を蝕む。
この世に永遠などないとわかっていても、おれはやつの気持ちが永遠であって欲しいと願ってしまう。
おれはバケツを強く擦った。
擦って擦って
おまえの気持ちが酸化しないように。
擦って擦って
おれに引きつくように。
バケツを蝕んでいた錆がぱらぱらと落ちてゆく。
そっとバケツを引き付ける。
露出した光沢がおれを嘲笑うかのように美しく輝いていた。
Fin
◆
シリアスキッドさんでした。
キッドさんの能力を見てまっさきに思いついたネタです。
ローは”金”だから大丈夫。
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