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煌く原子の光に飛び込もう
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それは誰にも知られてはいけない
秘密の言葉


★前回に次いで今度は説明文のような文体にしてみました。



ゾロが船長を「ルフィ」と呼ぶように、キラーが船長を「キッド」と呼ぶように、親しい人間同士というのは例え船長と船員という仲でも名前で呼び合うものだ。それは苗字や役職名と言うのはその人の本当の名前ではなく上辺だけのものであり、どこかしら白々しい感じがあるからである。所謂ラスト・ネームというのはその人そのものであり、それは時に呪術に使われるほど知られると大変危険なもので、古来の人たちはそれを諱(いみな)と呼んだ。

ユースタスはトラファルガーの癖で唯一許せないことがあった。自分勝手なところも、素直じゃないところも、天邪鬼なところも、怒りっぽいところも全て許してきた、というよりもむしろ愛しいとさえ感じていた彼だったが、どうしてもこれだけは苛立ちを隠せない。

「ロー」
「なんだ、ユースタス屋」

それはラスト・ネームを呼ばないこと。2人きりになると、ユースタスは好んでトラファルガーの諱を呼んだ。それは2人きりという空間をより一層引き立たせるためでもあり、親しいという気持ちを込めるためでもあった。ところがトラファルガーは一向に諱を呼ぼうとしない。おまけに「屋」付きである。いつになっても白々しいトラファルガーの呼び方についにユースタスは我慢ができなくなった。

「なんでテメェはおれの名前を呼ばない」
「はァ?呼んでるじゃねェか」
「ちげェよ。下の名前だ」

ユースタスは柄の悪い顔をして怒った。喧嘩っ早いやつのことだ。直ぐに負けじと怒った顔をするに決まってる。そう思った彼の考えとは裏腹に、トラファルガーは困った顔をした。困ったと言うよりは、照れくさい顔と言うべきだろうか。

「下の名前はお前を表す大事なモンだから軽々しく呼べねェよ」

トラファルガーの言葉に、やつがどんな人間に向かっても「屋」をつける理由が潜んでいることをユースタスは感じ取った。トラファルガーは非常に自尊心が強い反面、他者にも敬意を払っている。諱を呼ぶと言う行為は良く言えば親しさを表しているが、悪く言えば馴れ馴れしい。特に億を超えるような海賊の船長に対して行うには甚だしく無礼である。これは、トラファルガーなりのユースタスへ対する敬意の現われだった。

だが、ユースタスにはその敬意が白々しいものでしかなく。

「いいから呼べよ」
「だから軽々しく呼べねェって言ってるだろ」
「うるせェ、恋人に軽々しくもクソもあるか」

珍しく拗ねた子供のような感情をむき出しにしているユースタスを見てトラファルガーは心の中で苦笑いをした。クルー以外の諱を呼ぶのは何年ぶりだろう。思い出せないくらい遠い昔だ。だから、なんだか照れ臭い。それは誰にも知られてはならない秘密の言葉。

『キッド』

頬を赤らめながら、弱々しい声で囁くトラファルガーの顔を見てユースタスは満足げに微笑んだ。

Fin



最後まで読んで下さってありがとうございます。
今回は前回の「超新星爆発」に次いで、また文体を変えてみました。オリジナリティを模索中です。
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