煌く原子の光に飛び込もう
酒の肴
お前が聞き上手だから、もう夜が明けちまった
さりげなく管理人の中で続いています
★このお話の前
Another story of soap bubbles - Zoro * Law
Another story of soap bubbles - Drake * Law
Another story of soap bubbles - Bepo * Law
★このお話の後
氷の心
お前が聞き上手だから、もう夜が明けちまった
さりげなく管理人の中で続いています
★このお話の前
Another story of soap bubbles - Zoro * Law
Another story of soap bubbles - Drake * Law
Another story of soap bubbles - Bepo * Law
★このお話の後
氷の心
◆
早朝と言うにはまだ早過ぎて、深夜と言うにはもう遅い。
今日と明日のまさに間のとき。
星が輝く夜空の下で、シャボンディ諸島までに見てきた海をお互いに語り合った。海の美しさを存分に讃え合い酒の肴も大分尽きてきた頃。
おれはベンチの背もたれにぐっと背中を付けて伸びをした。こんなにもユースタス屋と親しくなるとは思ってもみなかった。話すたびに次々と共感できることが増えていく。気の置けないクルー達と話すのとは少し違った楽しさがユースタス屋との会話にはあった。きっとお互いキャプテン同士だからだろう。
「お前が海賊になった理由を聞いてもいいか?」
不意にユースタス屋が口を開いた。さしずめ、シメの肴といったところだ。おれの下らない理由ならいくらでも話してやるよ。
「親父を死なせてしまったから」
「・・・それが”死の外科医”になった理由か?」
鋭いところをこの男は突いてくるな、と思った。
「おれの能力はもともと治療用だ、痛みを伴わない切断は疾患部位の治療を容易くする」
「それで親父さんを助けようって思ったわけか」
「決して治らないものじゃなかった」
「・・・」
「おれは早く百年に一度の医者と呼ばれた親父を超えたくて仕方がなかった」
ユースタス屋は黙っておれの話を聞いてくれている。先程はその大きな口を引っ切り無しに開いて面白い話をしていたのに。赤い紅をさした唇を閉ざして静かな眼差しを向けるユースタス屋は、同性のおれから見てもかっこ良かった。
「自分の能力をバカみてェに過信しすぎたんだ。おれは百年に一度の天才を殺してしまった」
「トラファルガー・・・」
「そのとき、生や死に囚われなければならない医者が酷く嫌になった」
「お前・・・」
「大切なものを守れない自分が酷く嫌になった」
「・・・」
「だから海賊になったんだ。海賊は生や死に囚われない、自分の譲れない”ハート”をもつ者の集まりだろ?なぁ」
ユースタス屋、
そう言おうとした矢先、おれは気づいてしまった。
ユースタス屋の目から涙が零れていることを。
「ユースタス屋・・・?」
「くそっ・・・なんだか知らねェけど、涙が出てちまった」
「泣くなよ、辛気臭ェな」
「うるせえっ、お前が泣かねェからだ」
「親父のことで泣く涙はもう干からびちまったんだ」
ユースタス屋の涙は、おれの代わりの涙なんだろうか。だとしたら、大そうおかしな話だな。悪逆非道のユースタス屋が泣くなんて、それこそ”泣く子も黙る”出来事じゃねェか。
おれは事あるごとにこの話を酒の肴としていろんな奴に話してきたが、返ってくるのは憐れみや同情しかなかった。温かい言葉を掛けられても、おれはちっとも救われなかった。だがユースタス屋の涙は、憐れみや同情は微塵も感じられなかった。うまい言葉が見つからない。どんな感情をも超越した何かがユースタス屋の涙にはあった。強いて言えば魂の共鳴、という他ない。
おれはユースタス屋の頬を伝う涙に救われたのだ。
「飛んだとばっちりだぜ・・・お前のために泣くなんてよ」
「・・・お陰さまでおれの”ハート”は救われた」
「そうか、ならよかった」
そうほほ笑むユースタス屋の顔は優しかった。
ドクン、と心臓が鳴った。
「お前が聞き上手だから、もう夜が明けちまった」
そう言ってユースタス屋と一緒に海に目を向けた。
水平線上に太陽が頭を覗かせている。夜明けはもうすぐそこだ。
Fin
◆
最後まで読んで下さってありがとうございました。
最後の一言を今日の深夜にやっていた映画で言ってたんです。どうしてもローたんに言わせてみたかった(笑)
早朝と言うにはまだ早過ぎて、深夜と言うにはもう遅い。
今日と明日のまさに間のとき。
星が輝く夜空の下で、シャボンディ諸島までに見てきた海をお互いに語り合った。海の美しさを存分に讃え合い酒の肴も大分尽きてきた頃。
おれはベンチの背もたれにぐっと背中を付けて伸びをした。こんなにもユースタス屋と親しくなるとは思ってもみなかった。話すたびに次々と共感できることが増えていく。気の置けないクルー達と話すのとは少し違った楽しさがユースタス屋との会話にはあった。きっとお互いキャプテン同士だからだろう。
「お前が海賊になった理由を聞いてもいいか?」
不意にユースタス屋が口を開いた。さしずめ、シメの肴といったところだ。おれの下らない理由ならいくらでも話してやるよ。
「親父を死なせてしまったから」
「・・・それが”死の外科医”になった理由か?」
鋭いところをこの男は突いてくるな、と思った。
「おれの能力はもともと治療用だ、痛みを伴わない切断は疾患部位の治療を容易くする」
「それで親父さんを助けようって思ったわけか」
「決して治らないものじゃなかった」
「・・・」
「おれは早く百年に一度の医者と呼ばれた親父を超えたくて仕方がなかった」
ユースタス屋は黙っておれの話を聞いてくれている。先程はその大きな口を引っ切り無しに開いて面白い話をしていたのに。赤い紅をさした唇を閉ざして静かな眼差しを向けるユースタス屋は、同性のおれから見てもかっこ良かった。
「自分の能力をバカみてェに過信しすぎたんだ。おれは百年に一度の天才を殺してしまった」
「トラファルガー・・・」
「そのとき、生や死に囚われなければならない医者が酷く嫌になった」
「お前・・・」
「大切なものを守れない自分が酷く嫌になった」
「・・・」
「だから海賊になったんだ。海賊は生や死に囚われない、自分の譲れない”ハート”をもつ者の集まりだろ?なぁ」
ユースタス屋、
そう言おうとした矢先、おれは気づいてしまった。
ユースタス屋の目から涙が零れていることを。
「ユースタス屋・・・?」
「くそっ・・・なんだか知らねェけど、涙が出てちまった」
「泣くなよ、辛気臭ェな」
「うるせえっ、お前が泣かねェからだ」
「親父のことで泣く涙はもう干からびちまったんだ」
ユースタス屋の涙は、おれの代わりの涙なんだろうか。だとしたら、大そうおかしな話だな。悪逆非道のユースタス屋が泣くなんて、それこそ”泣く子も黙る”出来事じゃねェか。
おれは事あるごとにこの話を酒の肴としていろんな奴に話してきたが、返ってくるのは憐れみや同情しかなかった。温かい言葉を掛けられても、おれはちっとも救われなかった。だがユースタス屋の涙は、憐れみや同情は微塵も感じられなかった。うまい言葉が見つからない。どんな感情をも超越した何かがユースタス屋の涙にはあった。強いて言えば魂の共鳴、という他ない。
おれはユースタス屋の頬を伝う涙に救われたのだ。
「飛んだとばっちりだぜ・・・お前のために泣くなんてよ」
「・・・お陰さまでおれの”ハート”は救われた」
「そうか、ならよかった」
そうほほ笑むユースタス屋の顔は優しかった。
ドクン、と心臓が鳴った。
「お前が聞き上手だから、もう夜が明けちまった」
そう言ってユースタス屋と一緒に海に目を向けた。
水平線上に太陽が頭を覗かせている。夜明けはもうすぐそこだ。
Fin
◆
最後まで読んで下さってありがとうございました。
最後の一言を今日の深夜にやっていた映画で言ってたんです。どうしてもローたんに言わせてみたかった(笑)
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