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煌く原子の光に飛び込もう
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帰り道

なんだ満月、お前も笑ってんのか。

「お客さん、悪いが店を閉めさせてくれ」

酒場の主人が恐る恐る口にした。
おれ達の顔を見て賞金首だとわからないわけがないか。
ユースタス屋はこちらを見てにんまりと笑う。

「さずがにこんな店で暴れることなんてできねェよなァ」
「ああ」

おれが金を払おうとする前にやつは主人に金を払っていた。
なんだか”女扱い”されている気がして恥ずかしくなった。
今度飲むときは絶対おれが払ってやる。

主人のほっとした顔を尻目に酒場の外へ出た。
夜風がひんやりと潮の香りと混じって気持ちがいい。
おまけに今日は満月だ。

お互い船舶している場所が違うから、ここでお別れか。
もっとユースタス屋と一緒にいたい。
率直にそう思ったが、絶対言ってやらねぇ。そんな女々しいこと誰が言うもんか。

「おいトラファルガー」
「なんだ」
「送っていく」
「はぁ?」

さすがにその一言にはびっくりだぜ、ユースタス屋。
どこまでお前はおれを女扱いしていやがる!

「てめぇ、2億の首をなめてんのか。お前から消すぞ」

ユースタス屋は髪をかきながら、困った顔をした。
なんだってんだ。

「だって、お前ともっといたいから」
「なっ…」

なんでてめぇはそんな恥ずかしいことを簡単に言ってしまうんだ!
バカバカバカ!!!!!
恥ずかしいからやめてくれ。そんな言葉おれにかける言葉じゃない。
そんなのは女にかける言葉だろ。

「なっ、なに言ってやがる。おれはもう帰るぞ」

そう言っておれはやつに背を向けて歩き出そうとする。

「待てよ」

すぐさまユースタス屋に腕をつかまれる。

「なんだ」
「お前はおれといたくないのか?」
「っ…」

そんなこと聞くなよ。
そんなこと…

お前、おれが強がってんのわからねェのか。
そんなことお前に面と向かって言えねェよ!!!

「言葉に詰まってるってことは、いたくないのか。お前いつもおれといるときつまんなそうだもんな。」
「?」
「話をしてるときだって無表情だし、返答もさばさばしてるし…」
「あ…」

確かにおれはお前と話してるときに笑ったり喜んだりできない。
でもそれは恥ずかしいからであって、お前といたくないなんて微塵も思ったことない。

徐々にユースタス屋の顔が曇っていく。
お前がそんなに気にしていたなんて、知らなかった。

「それじゃあ、おれ帰るぜ」

今度はユースタス屋がおれに背を向けた。
コツ…コツ…コツ…
帰っちまうのかよ。
コツ…コツ…コツ…
このまま、お前に勘違いされたままになっちまうのかよ。
コツ…コツ…コツ…
ユースタス屋!

「待てよ!ユースタス屋!」

やつの腕を握る。

「トラファルガー…」
「まだ答えてないだろ。お前は早とちりしすぎなんだよ!」
「…じゃあ、どうなんだ」

「お前とずっと一緒にいたい!」

おれは何を言ってんだ。この真夜中に大声で。
自分にびっくりだ。

だが何より驚いたのは―やつの顔だ。…笑ってやがる。

「いつもそうやって言ってくれると、こっちも嬉しいんだがな」
「…お前、謀ったな」
「さ、帰るぞ」

おれの天邪鬼な文句を聞かず、おれの手を握ってやつは歩く。
空には一点の曇りもなく満月が輝いている。
なんだ満月、お前も笑ってんのかばかやろー。

「ロー」
「なんだ!」
「お前の顔、真っ赤だぞ」
「うるさい!」

当たり前じゃねェか。
だって、お前が隣で笑ってくれてるんだから。
それがどうしようもなく嬉しいから。

「今度飲むときはおれが全額払ってやる。たまには恥ずかしい思いしやがれ!」
「別におれは恥ずかしくないが?」
「!」

売り言葉に買い言葉。
赤面するおれをやつは大そうおかしそうに笑っていた。

Fin


管理人の大好物、ツンツンローさんです。
たまにはローにかわいいこと言ってもらいたいキッドさんでした。
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