煌く原子の光に飛び込もう
愛言葉
カードの示す未来よりも
大切な今
カードの示す未来よりも
大切な今
◆※ドレホ
ふと街に出向くと、裏通りに妙な行列を見つけた。
その列は屋台へ向かうわけでもなく、店に向かうわけでもない。
ただ一人の男に向かって真っすぐ伸びている。
「おれの未来を占ってくれ!」
「案ずることはない、天命を全うできるだろう」
まさに噂が噂を呼び、人々はこの男に自分の未来を占ってもらおうと躍起になっている。全くもっておかしい。並んでいる連中は、この男が海賊だということを知らないのだろうか。
「海賊をやめて占いの館でも開業するのかホーキンス」
「ドレーク」
白葱を削ったような美しい指先でカードを踊らせる。その姿はさながら、運命を牛耳る神のようである。ホーキンスはおれの名前を呼んで一瞬だけおれを見ると、すぐさま目線をカードに向けた。相変わらずな無表情だ。
先ほどまであった行列は、おれの『海賊』という言葉で瞬く間に散ってしまった。営業妨害だとホーキンスは毒づいたが、そもそも金など取っていなかった。その点について言及しようと思ったが、おれは言いだせなかった。この男は、金が目的なのではない。人の運命を見ることが目的なのだ。
「悪かったな」
「別にいい」
「おれの未来は見えるか?」
その言葉にまたホーキンスはこちらに目を向けた。今度は長かった。思わず、胸の鼓動が速くなった。
「お前のは”見えない”」
意表を突く言葉におれは首を傾げた。
「お前は恐竜と言う過去を併せ持つもの。未来は霞んでしまって見えない」
「ほう…そういうものなのか」
わかったような返答をしたものの、心の内は疑問だらけだ。確かに悪魔の実によって恐竜の姿を手に入れたが、それが未来を占うことと何の関係があるのか。しばらく考えて出した結論は、その疑問が愚問だということ。関係性など、占うことのできないおれが考えても無駄なことだ。
だが、おれはそんな関係性などやはり無かったことに気づかされることになる。
「未来なんて見る必要はない」
「大事なのは今だ」
ホーキンスからの精一杯の愛言葉だと解釈することに、そう時間はかからなかった。
Fin
◆
9月頭からずーっと構想を練っていたドレホでした。
あお様主催のオフ会で「キドホを書きます」とゴルバチョフ様に宣言したのがきっかけです。
ゴルバチョフ様に感謝を込めて。
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